なぜダメ?犬が玉ねぎ食べたらどうなる?中毒症状や致死量、少量でもダメ?
「犬は玉ねぎを食べると中毒を起こす」ということを知らないという飼い主さんは、おそらくいないと思います。
でも、実際犬が玉ねぎを食べたらどうなるのか、なぜ玉ねぎを食べたらダメなのかについては分からない、という方がほとんどではないでしょうか?
そこで今回は、犬の玉ねぎ中毒について徹底特集します。
少量の玉ねぎでもダメなのかなど、玉ねぎ中毒の致死量についてや、いったいどのぐらいの時間で中毒症状が出るのかといったことまで全網羅!
なぜダメ?犬が玉ねぎを食べると危険な理由
まず、なぜ犬は玉ねぎを食べると危険なのか、について確認しておきましょう。
玉ねぎの中で中毒物質とされるのは、有機チオ硫酸化合物です。
さらに、ここに玉ねぎ特有のニオイを発するアリルプロピルジスルフィドが加わることによって、有機チオ硫酸化合物の体内への吸収率はアップ。
犬は、有機チオ硫酸化合物を分解する酵素を持っておらず、体内に有機チオ硫酸化合物が入ると、赤血球のヘモグロビンを酸化させてサビつかせてしまいます。
ヘモグロビンは、全身に酸素を運ぶという重要な役割を果たしていますが、有機チオ硫酸化合物によってその働きを封じられてしまうという訳です。
さらに、酸化したヘモグロビンが増加すると赤血球の内部の膜に集まってハインツ小体(かたまり)になり、細菌などの異物を捕らえて細胞内で消化するマクロファージがハインツ小体を異物と認識し、赤血球自体を破壊して溶血し、貧血を起こします。
これが、犬の玉ねぎ中毒のメカニズムです。
ちなみに少し前までは、アリルプロピルジスルフィドが中毒物質だとされていましたが、現在ではsodium trans-1-propenylthiosulfate、sodium cis-1-propenylthiosulfate、sodium n-propylthiosulfateという3つの有機チオ化合物が、犬の玉ねぎ中毒の原因物質であるということが判明しています。
生以外は?犬は玉ねぎ全般にダメ?
生の玉ねぎ以外の加熱した玉ねぎや玉ねぎの皮などにも、中毒物質は含まれているのでしょうか?
加熱した玉ねぎ
少し前まで揮発性のあるアリルプロピルジスルフィドが原因物質とされていたため、「生の玉ねぎはダメだけど、加熱したら中毒物質は少なくなる」という間違った情報がいまだに残っているようです。
しかし、有機チオ化合物は、加熱しても消えることはありません。
加熱した玉ねぎでも、犬は中毒を起こします。
加熱した玉ねぎを犬に与えてはいけません。
玉ねぎを加熱することによって、有機チオ化合物は減るどころか、濃縮されてより危険度が上がることが確認されています。
また、有機チオ化合物は煮汁の中にも溶けだすため、玉ねぎを煮た汁も犬に与えてはいけません。
玉ねぎの皮
玉ねぎの皮に有機チオ化合物が含まれているかどうかは、ハッキリしていません。
しかし、玉ねぎの皮のすぐ下には、玉ねぎの実があります。
玉ねぎの最も外側の皮をかじったとしても、成分が浸透していないとは限りません。
実際、玉ねぎの皮をかじったことによって、中毒を起こしたという事例もあります。
よって、玉ねぎの実ではなく皮をかじったという場合でも、中毒を起こす可能性はあります。
犬が玉ねぎを食べると起こる中毒症状
犬が玉ねぎを食べると起こる中毒症状の初期段階では、まず元気がなくなり、下痢や嘔吐、発熱がみられます。
その後、症状が進むと、脈や呼吸が早くなり、痙攣(けいれん)発作や震えといった症状がみられ、血尿や血便、吐血…
さらに症状が進むと、呼吸困難に陥り、死に至ることもあります。
ちなみに、血尿の色は赤色からやや暗い赤色です。
ヘモグロビン尿と呼ばれ、体内で赤血球が大量に破壊され、尿中にヘモグロビンが排出されることによって起こります。
また、上記以外にも、口の中の粘膜や舌の色が異常に白くなる可視粘膜蒼白(かしねんまくそうはく)も玉ねぎ中毒の症状の一つです。
犬が玉ねぎを食べてから中毒症状が出るまでの時間
愛犬が誤って玉ねぎを食べてしまった場合、いったいどのぐらいの時間で症状が現れ始めるのか、気になりますよね。
食べてすぐに症状が出ないからといって安心できないのが、玉ねぎ中毒。
なぜなら、玉ねぎを食べて中毒物質が身体の中に入り、赤血球を壊し始めるまでにかなり時間がかかるからです。
発症は、犬が玉ねぎを食べてから、早くても数時間後。
なんと、数日後に初めて症状が現れることも。
そして、症状のピークが来るのは数日後と言われています。
例えば、玉ねぎを食べて数時間後に元気がなくなって、軽い下痢がみられるなどの症状が見られた場合、それで終わりというわけではないかもしれません。
「軽く済んだな」と甘くみていると、その後容体がどんどん悪化して、数日後に血尿や呼吸困難などに陥る可能性もあります。
犬の玉ねぎによる致死量は?
犬の玉ねぎによる致死量は、犬によってかなり個体差があります。
身体の大きさや年齢、健康状態はもちろんのこと、玉ねぎの中毒成分への感受性は、その犬がどんな遺伝子を持っているのかによって大きく違うそう。
一般的には、体重1kgあたり約20gの玉ねぎが致死量に相当すると言われています。
よって、体重1kgあたり5~10g程度の玉ねぎを摂取した場合も、注意が必要です。
例えば、体重5kgの犬なら玉ねぎ100gが致死量となり、25~50g以上食べると注意が必要となります。
玉ねぎ1個は、だいたい200g程度なので、体重5kgの犬の場合、玉ねぎ半個が致死量相当となります。
ただし、実際に愛犬が玉ねぎに対してどの程度の感受性があるのかは不明。
玉ねぎの中毒成分への感受性は個体差が激しいため、玉ねぎをほんの一かけら食べただけで中毒症状を発症する犬もいれば、玉ねぎ1個食べても平気という犬もいます。
少量の玉ねぎでも注意が必要な犬種
犬の玉ねぎの中毒成分への感受性には個体差があると述べましたが、一つだけ分かっていることがあります。
それは、「柴犬と秋田犬は、玉ねぎ中毒の好発犬種である」ということです。
つまり、柴犬と秋田犬は、玉ねぎ中毒にかかりやすいということ。
これは、柴犬と秋田犬がHK/HG型の赤血球を持っていることに起因しているそう。
グルタチオンという物質が多い赤血球の型をHG型といいます。
HG型の赤血球と玉ねぎ中毒の原因物質であるチオ硫酸化合物は反応しやすく、ヘモグロビンを酸化してしまいます。
また、カリウムが多いHK型の赤血球も、同様にチオ硫酸化合物と反応しやすく、ヘモグロビンを酸化しやすいということが分かっています。
外来犬種の場合、HK型の赤血球を持たず、LK型というカリウム濃度が低い赤血球を持っていることが多いそう。
HK型の遺伝子を持つのは日本犬に多いため、柴犬や秋田犬は玉ねぎ中毒にかかる率が高いということですね。
愛犬が玉ねぎを食べてしまった場合の対処法
それでは次に、愛犬が玉ねぎを食べてしまった場合の対処法について、お伝えします。
自宅での応急処置
まず、愛犬が玉ねぎを食べてしまったことに気づいたら、すぐに口の中を確認します。
口の中に玉ねぎが残っているようなら、すぐに取り除きます。
ガーゼなどを水に濡らして、歯の隙間や口の中をキレイにふき取りましょう。
そして、すぐに動物病院に電話をします。
その際に伝えることは、「どのぐらいの量の玉ねぎをいつ食べたのか」ということと、「犬種・体重・年齢・病歴」です。
ちなみに、胃の中に入ってしまった玉ねぎを自宅で吐かせるのは、やめましょう。
応急処置として「塩水を飲ませて吐かせる」などの対策を取りたくなりますが、塩水を飲ませると塩中毒にかかる可能性や、吐いたものを喉(のど)に詰まらせる可能性もあります。
素人判断で強制的に吐かせる処置をするのではなく、まず獣医師に任せましょう。
動物病院での処置
実は、玉ねぎ中毒には解毒剤がありません。
つまり、動物病院でも対症療法になるということです。
中毒症状が、どの程度進んでいるのかによって、処置方法は異なります。
玉ねぎを食べてから1時間以内ならば、催吐(さいと)処置を行うことが多いでしょう。
4時間以内なら、胃洗浄をします。
この2つの処置は、かなり犬の体力を奪います。
獣医師の判断のもと、最も適切な方法を選びましょう。
そして、すでに貧血が起きているようなら、酸素の供給や輸血も検討されます。
玉ねぎ中毒の症状が出ている場合も出ていない場合も、血液の酸化を防止するためビタミン剤の投与は有効です。
また、ヘモグロビン尿が出ている場合は、腎臓の機能を損なわないような点滴をしたり、ステロイド剤を投与することも。
いずれにしても、その犬の状態に応じて、適切な処置を施すことが大切。
玉ねぎ中毒の場合、数日後に中毒のピークが来るため、処置後も経過観察期間として何度か来院する必要があります。
愛犬が玉ねぎを食べないようにする対策
愛犬に玉ねぎを食べさせないようにするには、生の玉ねぎに注意したらいいだけではありません。
人間が食べる料理には、意外と多くの玉ねぎが使われています。
例えば、ハンバーグやカレー、ギョウザ、シチュー、スープ、味噌汁など、身近な料理のほとんどのものに玉ねぎが入っているということも。
玉ねぎが入ったすき焼きの肉を愛犬に与えるのもダメです。
玉ねぎエキスは煮汁の中に大量に溶けだしているため、すき焼きの肉は玉ねぎの中毒成分で侵(おか)されています!
愛犬に玉ねぎを食べさせないようにするには、まず人間の食べ物を犬に与えてしまうという習慣をなくすべきでしょう。
愛犬が欲しがっても、絶対に与えないという習慣が愛犬の命を守ります。
また、食材の保管庫を愛犬が触れないようにしたり、テーブルの高さを高くしてお皿などに愛犬の手が届かないようにしたりする工夫も必要。
また、玉ねぎを切ったまな板で愛犬のフードトッピングをカットするなどもNGなので、覚えておきましょう。
さらに、人間の食事時間や調理中には、愛犬をケージの中に入れて隔離すると万全ですね。
犬に中毒症状を引き起こす!玉ねぎと同じネギ属の野菜
玉ねぎと同じネギ科の野菜も、玉ねぎ同様に中毒を起こします。
ネギ科の野菜というと、青ネギや長ネギ、ニンニク、ニラなどがあげられます。
ただ、この中でニンニクだけは、中毒度が低いとされています。
なぜならニンニクの場合、玉ねぎのように大量に使うということがないため、中毒物質が体内に入ったとしても、それほど影響がないと考えられているからです。
それどころか、ニンニクには滋養強壮作用があり、ノミ対策にも役立つということで、ペット用のサプリメントとして販売されているものもあるほど。
犬の健康を考えたプレミアムドッグフードの中にも、ニンニクを少量配合しているものもあります。
ただ、ニンニクに「中毒成分が含まれていない」というわけではありません。
ニンニクの中にもアリシンという中毒物質が含まれていて、大量に摂取すると玉ねぎ同様の中毒症状を発症します。
犬用のドッグフードやサプリメントの中には、中毒物質であるアリシンを除去したり無毒化して販売しているものもあるようです。
まとめ:犬に玉ねぎは絶対にダメ!
今回は、犬が玉ねぎを食べるのはなぜダメなのか、犬が玉ねぎを食べたらどうなるのか、という具体的な中毒症状についてお伝えしました。
犬の玉ねぎ中毒の致死量は、体重1kgにつき20g程度とされていますが、少量でも中毒症状を発症してしまう子もいます。
洋犬の場合、玉ねぎの中毒物質に対する感受性が弱いため、「少量の玉ねぎなら与えてもいい」と堂々と発信している飼い主さんもいらっしゃいますが、玉ねぎの中毒物質に対する感受性にはかなり個体差があります。
誤った情報を信じて、愛犬に苦しい思いをさせないよう、愛犬には絶対に玉ねぎを食べさせないようにしましょう。
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