なぜ?犬にぶどうがダメな理由、中毒症状や腎不全の危険性
犬にぶどうを食べさせると腎不全(じんふぜん)を起こしてしまうこともあるため、犬にぶどうを食べさせるのはやめたほうがいいとされています。
しかし、中には「犬にぶどうを食べさせてはダメというのはデマ」と思い込んでいる方もいるようです。
果たして、どちらが真実なのでしょうか?
そこで今回は、犬にぶどうを食べさせたらダメな理由や、犬にぶどうを食べさせてしまった時の症状や対処法などについて詳しく解説します。
なぜ犬はぶどうNG?食べさせてはダメな理由
まず、犬にぶどうを食べさせてはダメな理由について。
実は現在のところ、ぶどうの成分の中で、何がどのように犬に作用するのかは、判明していません。
憶測として「カビ毒や農薬・殺虫剤、さらにいまだに発見されていないぶどうの新成分などが原因ではないだろうか」という仮説を立てられているようですが、明確な答えは得られていません。
つまり、なぜぶどうを犬に食べさせてはダメなのかという理由は分からないということです。
しかも、具体的なぶどうの中毒事例としての報告が上がり始めたのは、なんと2000年に入ってから。
それ以前は、獣医師会において「ぶどうが中毒を起こす食物であること」は認識されていませんでした。
ただ、ぶどうを食べさせた結果、中毒を起こしたという事例として、急性の腎機能不全や死亡例が実際に多数報告されています。
具体的な原因物質が判明するまでは、念のため犬にぶどうを食べさせないほうがいいというのが、多くの獣医師らの見解です。
犬がぶどうを食べると中毒症状や腎不全になる危険性が!
犬がぶどうを食べると、中毒症状や急性腎不全を起こしてしまう可能性があります。
腎不全とは、腎臓の機能が正常に働かなくなる病気。
腎臓では体に必要なものを体内に吸収し、不要なものを体外に排出するという仕分け作業を行っています。
腎臓で水分量の調整も行うため腎臓が働かなくなると、体内に毒素が溜まり、嘔吐(おうと)や下痢をしたり、尿の出が悪くなったりと様々な症状が出てきます。
急性腎不全では症状が急激に進むため、あっという間に取り返しのつかない状態になってしまうことも。
以下に代表的な症状を挙げておきます。
- 元気がなくなる
- 食欲がなくなる
- 水をがぶ飲みする
- 尿がたくさん出る or 尿が出ない
- 嘔吐や下痢をする
- 脱水症状を起こす
ちなみに、急性腎不全の症状が進むと、やがて死に至ります。
犬がぶどうを食べてから中毒症状が出るまでの時間
犬がぶどうを食べてすぐに症状が出ないからといって、安心してはいけません。
実は、犬がぶどうを食べてから中毒症状が出るまでには、およそ1~4時間かかるそう。
ただ、この数字は「絶対」というわけではありません。
ぶどうのどんな成分が、どのように犬に作用して中毒症状が出るのかというメカニズムが解明されていないため、明確な時間をあげることもできません。
あくまで、今まで挙がってきた症例による数字となりますので注意しましょう。
犬がぶどうを食べた時の致死量
犬がぶどうを食べた時の致死量も、実はハッキリとした基準があるわけではありません。
実際に挙がってきている症例から判断すると、体重1gあたりぶどう3~57gという量で中毒症状が出ると報告されています。
例えば体重5kgの小型犬なら、15~285gの量ということになります。
これは、巨峰なら約1粒~17粒程度とかなり差があります。
また、「実」のみよりも「皮つき」で食べたときのほうが、中毒症状が出やすいという意見もあります。
いずれにしても、たった1粒のぶどうでも中毒症状が出る可能性があるということを頭に入れ、犬にはぶどうを1粒も食べさせないことが重要です。
ぶどうに似ている、あの食べ物は食べられる?
それでは次に、ぶどう果汁やマスカット、レーズンなども、犬にとって害があるのかを確認していきましょう。
ぶどう果汁(ぶどうジュース)
ぶどう果汁やぶどうジュースは、もちろん「ぶどうの成分」そのものなので、犬にとって害になります。
実際、ぶどうジュースを少量飲んだだけで、中毒を起こした犬の例が挙がってきています。
また、注意すべきは、ぶどうのエキスが入った加工品です。
例えば、ぶどうエキスが入ったヨーグルトやアイス、ゼリー、グミもNG。
また、ぶどうの種子からしぼったグレープシードオイルも人間にとっては健康に良いものですが、犬には与えないほうがいいでしょう。
マスカット
ぶどうの中でも色素の薄いマスカットも、ぶどうと同じ。
犬には、与えると中毒症状が出るとされています。
マスカットは1粒6g程度なので、5kg小型犬なら2粒~48粒程度で中毒症状が出ると考えてください。
ちなみに、ぶどうに似ているブルーベリーやカシスは、現在のところ中毒症状を起こさない食物として認識されています。
これらは、犬にとって有効な成分も豊富に含まれているため、市販のフードの中には率先して採用しているものも。
ただ、食物繊維は多めなので、与え過ぎはダメです。
レーズン(干しぶどう)
実は、ぶどうよりも問題視されているのが、レーズンです。
レーズンはぶどうを乾燥させているため、成分がギュッと凝縮されており、少量の摂取でも中毒症状を発症してしまいます。
ちなみにレーズンでは、体重1kgに対し2.8g程度でも中毒症状が出る可能性があるそう。
レーズンは1粒約0.6gほどなので、体重5kgの小型犬なら、だいたい23粒摂取すると中毒の危険性があるということです。
レーズン単体を犬が食べるという状況は、あまり生まれないかもしれませんが、レーズンはパンやお菓子などにも使われています。
特に、レーズンパンには多くのレーズンが入っていますので、気を付けましょう。
愛犬がぶどうを食べてしまった時の対処法
まず、愛犬がどのぐらいの量のぶどうを食べたかを確認します。
1粒程度などの盗み食いなら、しばらく様子をみてもいいでしょう。
ただし、現在は報告がまだ挙がっていないだけで、もしかしたら1粒でも中毒症状を発症する可能性がないとも言い切れません。
元気がなくなったり、水をやたら飲んだりするなどの異変があったら、すぐに動物病院へ連れていきましょう。
そしてもちろん、致死量に達するほど大量のぶどうを摂取してしまった場合は、具合が悪くなっていなくても、即動物病院へ。
中毒症状が出るまでに数時間かかることもありますが、症状が出始めるとあっという間に症状が悪化してしまうことも。
ぶどうを食べて中毒症状が出たときに重症化しないためには、早期の治療開始が必須条件です。
動物病院では、症状によって段階的に治療が行われます。
胃の内容物を吐かせたり、胃の洗浄をしたり、下剤をかけたりします。
また血液検査で腎不全の確定が出たら、点滴で有害物質を外に出すという治療に入ります。
この段階にくると入院治療となり、命の危険性も。
治療費は5~10万円程度とされますが、治療内容や重症度によっても異なります。
愛犬がぶどうを間違って食べないようにする対策
犬にとって有害なぶどう。
犬が食べないようにするには、犬の届く位置にぶどうを置かないことが大切です。
また、「人間がぶどうを食べる時、床にぶどうを落としてしまいそのまま放置」などということのないようにしましょう。
できれば、ぶどうやぶどうを含む加工品を犬の前や、犬が過ごす部屋で食べないようにするといいですね。
また、普段の散歩コースにぶどうを栽培しているお宅がないかも確認してみましょう。
ぶどうは、家庭菜園の果樹として育てやすい部類に入るため、意外と多くのご家庭の庭に植えられていることも。
庭先から伸びたぶどうの枝からポロリと落ちたぶどうの実を「愛犬がパクリ」ということのないように気を付けましょう。
まとめ:デマ情報に惑わされず、犬にとってぶどうは危険と覚えて!
今回は、犬にぶどうを食べさせた時の具体的な症状や対策についてお届けしました。
ぶどうの成分が犬にどのような作用をするのかは、まだ分かっていないためデマ情報も多いのが現状。
ですが実際、犬がぶどうを食べることによって、腎不全に陥り死に至るケースも報告されています。
正確な情報が発信されるまでは、「犬にとってぶどうは危険」という認識で、犬にぶどうを与えないようにしましょう。