なぜ犬はなめる?顔・口・手足・腕をなめる理由、やめさせる方法
愛犬とのスキンシップは楽しいものです。
でも中には、執拗(しつよう)に人間の顔や手をなめてきたり、犬自身の手足や腕、さらには床までもなめたりする犬も。
なぜ、犬はこんなにも、なめるのが好きなのでしょうか?
そこで今回は、犬が人間や犬自身、また床などをなめる理由について徹底解剖します。
顔・口・手足・腕と部位別になめる理由を解説し、さらに、どうやったらなめるのをやめさせることができるのかを考えます。
なぜ犬はなめる?なめる箇所によって意味が違う?
人間の顔・口・手足・腕、また犬自身の手足や口周り・お尻、さらに床など、犬は色んなところをなめます。
なぜ、犬はなめるのが好きなのでしょうか?
犬が何かをなめるのは、
- そのものに対して愛情を示している場合
- 興味関心がある場合
- 単なる退屈しのぎである場合
- ストレスを和らげる目的である場合
が考えられます。
犬がなめる意味は、一体どんな状況でどこをなめているのかによっても全く違ってきます。
犬がなめる理由というのは、犬を飼い慣れていないと、分かりやすいものと分かりにくいものとがあります。
まずは、愛犬が主にどこをなめているのかを観察して、その理由を探っていきましょう。
犬が飼い主をなめる理由
それではまず、犬が飼い主をなめる理由について考えていきます。
犬が口や顔をなめる理由や気持ち
犬が飼い主の口や顔をなめるのは、主に親愛の情(親しい人を大切にする気持ち)を示しているからとされています。
飼い主に対して「大好き」「ずっと一緒にいてね」という気持ちを表すために、飼い主の口や顔をなめているというわけです。
他には、犬の祖先であるオオカミ時代の名残という説も。
オオカミは挨拶するときにお互いに口をなめあうという習性があるそう。
また、子犬が母犬に離乳食をねだるときに母犬の口元をなめる習慣があり、その習慣が残っているものとも言われています。
犬が手や腕をなめる理由や気持ち
犬が飼い主の手や腕をなめる理由は、飼い主の顔や口をなめるのと同様に親愛の情をあらわしているとされています。
ただし、手や腕をなめている時は、顔や口をなめるよりもややライトな気持ちであることが多いようです。
怒られた後に「許してね」という気持ちで手や腕をなめて、ご機嫌伺いをしていることも。
また、おやつやフードを直接飼い主の手からもらう習慣がある子は、飼い主の手や腕をなめて「おやつちょうだい」「お腹空いたよ」と訴えている場合もあります。
ちなみに初めて会う人に対して、手や腕をなめるという行為を犬がする場合は、相手にある程度心を許していると言えます。
犬が足をなめる理由や気持ち
犬が飼い主の足をなめる時は、飼い主に甘えたい気持ちが強いことが多いです。
飼い主が忙しく立ち働いているときに、足元に絡みついてペロペロと足をなめてくる場合も「さみしいよ、かまってよ」と、飼い主をこちらに振り向かせたい気持ちでいます。
また、人間の足は他の部位よりも臭いがキツイため、犬が気になってなめている場合もあるよう。
飼い主のことが大好きなので、大好きな飼い主の体臭を感じていたいという時に足をなめるという行動に出るということです。
犬が鼻や耳をなめる理由や気持ち
犬が飼い主をなめるのは、顔や口、手が多いとされますが、まれに鼻や耳といった特定部位を狙ってなめてくるワンちゃんもいます。
鼻をなめる場合は、もしかしたら鼻水に含まれる塩分を「おいしい」と感じてなめているのかもしれません。
また、耳も同様に耳垢や皮脂などの独特の臭いや味を求めてなめているのかも。
犬が自分の手足や体をなめる理由や気持ち
それでは次に、犬が自分の手足や体をなめる理由や気持ちについて考えてみましょう。
犬が体の特定の部位ばかりをなめる場合は、ケガ・病気を疑う
犬が体の特定の部位ばかりをなめている時には、なめている場所をしっかりとチェックしてみましょう。
もしかしたら、その部分に何か異常があるかもしれません。
例えば、足ばかりなめている場合、足の肉球の間に何か挟まっていたり、ケガをしていたりすることが考えられます。
また、皮膚がただれていたり、できものができていたりと、皮膚病という可能性も。
まずは、犬がなめている場所をしっかりと見て、触ってみましょう。
グルーミングや眠る前に少しだけなめることも
特に怪我や病気などがないようなら、単に体をキレイにするためになめている場合が多いです。
いわゆるグルーミングという行為で、なめることによって体をキレイに清潔に保とうとしています。
グルーミングするかしないかは、犬による個体差が大きいです。
また、犬が手足などの体をなめるのは、「眠いから」という理由の場合もあります。
眠る前に少しだけペロペロと手足をなめているだけなら、いわゆる入眠儀式(眠る前の習慣)的な感じと捉えて良いでしょう。
体をなめることで、安心して眠りに就くことができます。
気持ちを落ち着かせるためになめる
犬は何か不安なことがある時に、自分の体をなめることがあります。
そういうときは、短時間で終わらず、ほぼ長い時間なめ続けていることが多いようです。
普通は自分の体をなめることで、徐々に安定した気持ちになり、落ち着きを取り戻します。
ただし、なめ続けてもなかなか不安感から抜け出せないことも。
例えば、何か悪さをした犬に対して、飼い主さんがいつまでも怒り続けた時などは、その余韻(よいん)から抜け出せず、いつまでも不安感が続くことが多いようです。
犬が床をなめる理由や気持ち
犬は、飼い主さんや犬自身の体以外に、床などをなめる場合もあります。
例えば、床に何か食べ物のカスが落ちていたり、臭いが付着していたりする場合は、食べたり臭いを嗅いだりするために、床をなめてしまうよう。
床をいつもキレイに掃除しているのに、なぜか犬が床をなめるという時は、単にストレス解消のためだったり、退屈さを紛らわせるためだったりするようです。
犬がなめることによる思わぬ弊害とは?
犬がなめるという行為は、一見、何の問題もなく感じます。
しかし、実は犬がなめることによって、犬にとっても人間にとっても思わぬ弊害が生じることも。
犬が強迫神経症を発症
犬があまりにしつこく長時間にわたって「なめる」という行為を続ける場合、強迫神経症を発症している可能性があります。
強迫神経症とは、同じ行為を繰り返し行ってしまう精神状態のことで、自分の意志では止められないというのが特徴です。
不安な気持ちを落ち着かせるために特定部位をなめるという行為を続けた結果、その部分だけが赤く腫れあがってしまったり、脱毛したり、皮膚炎にかかってしまったりすることも。
なめ続けた部分に炎症が起きることによって、痛みを感じるようになり、ますますなめ続けるという悪循環に陥ることが多いとされます。
人間が人獣共通感染症(ズーノーシス)にかかる
犬になめられることは、人間にとっても手放しで喜べることではありません。
傷口のある部分をなめられた場合、ズーノーシスと呼ばれる人獣(じんじゅう)共通感染症にかかることがあります。
人獣共通感染症には、パスツレラ症や犬ブルセラ症など800ほどの種類があり、日本でも40ほどの病が確認されています。
傷口がある場合、そこから侵入してきて人体をむしばみます。
特に小さなお子さんや、妊婦、高齢者など、免疫力が低下している人は要注意です。
犬がなめる行動をやめさせる方法
あまりに病的に犬がなめ続ける場合や、飼い主さんの体に傷があって感染症にかかる可能性がある場合は、犬がなめる行動をやめさせなければなりません。
最後に、その方法を記載しておきます。
なめられることが嫌いと犬に伝える
よくなめる犬に対しては、「人間は、なめられることが嫌い」ということを犬に伝えなければなりません。
つまり、しつけです。
犬が飼い主さんの顔をなめようとしたら、「まて」の号令を出します。
上手に「まて」ができたら、ご褒美(ほうび)をあげましょう。
そもそも「まて」ができない犬の場合は、まず「まて」「おすわり」など基本的な号令に従えるよう、しつけをしてください。
飼い主の静止を聞かず、顔をなめてきた場合は、犬のことを無視して部屋から退出しましょう。
そのとき決して「ワー」「キャー」と叫んではいけません。
飼い主のハイテンションな声を聞くと、犬は「喜んでくれている」と勘違いし、ますますなめてくるように…。
強迫神経症傾向がある犬の場合は、スキンシップの時間を多めに
体の同じ場所をしつこく長時間なめ続けるというような強迫神経症傾向のある犬の場合は、スキンシップの時間を多めにとってあげましょう。
犬とのスキンシップの取り方は様々。
まずは散歩の時間を多めに、充実させてあげます。
小型犬だからと「家の中で遊ばせるので充分」などという飼い主さんもいるようですが、例え小型犬でも毎日家の外に連れ出して気分転換させてあげることは大切です。
どうしても外に出られない時は、家の中でボール遊びや引っ張り遊びなど、愛犬が好きな遊びを中心に時間をとってあげましょう。
また、留守番させる時間も、なるべく短くなるよう配慮も必要。
仕事の場合は仕方ありませんが、自分の遊びのために長時間家を留守にすることがないように気を付けてあげましょう。
エリザベスカラーや特定部位の保護、スプレー等も有効な手段
いろいろと工夫をしてなめるのを止めさせるように努力しても、なかなかすぐに直らないことがあります。
「なめる」というクセを無くすには、かなり時間が必要です。
でも、犬の体に傷がある場合などは、なめるのを止めるまで、のんびり待つ時間はありません。
そういう時におすすめなのが、エリザベスカラー。
エリザベスカラーとは、犬の首周りにつける保護カラーのことで、犬の手術後に傷口をなめないように使ったりする医療用具です。
また、なめている部分が足の肉球などの場合は、肉球部分を覆ってしまうというのも一つの手段。
犬用の靴下を履かせるといいでしょう。
また、飼い主の手や床などをなめさせたくない時には、犬が嫌がる苦み成分などを含んだ専用のスプレーを使うという方法もあります。
専用スプレーなら、犬の体には影響なく安全に使えますし、独特の苦みから「これはまずい」と犬が認識し、なめなくなる可能性も。
ただし犬によっては、全く効果がない場合もあります。
犬がなめる理由を考えることが大切
今回は、犬が人間の顔・口・手足・腕などをなぜなめるのか、また犬自身をなめ、床をもなめるのはなぜなのか、犬がなめる理由について考えてみました。
犬がなめるのは、本能とも言うべき自然な姿ではありますが、人間と生活する以上、なめることによって不都合も出てきます。
犬がなめるのをやめさせるには、飼い主さんが愛情をもって犬を観察し、「なぜなめるのか」を考えることがまず必要です。
犬がなめる理由を理解し、犬との楽しい生活を送れるようにしましょう!