犬の分離不安とは?原因や症状、治し方・対処法を紹介
犬の分離不安をご存知でしょうか?
例えば、飼い主さんが留守にしている間に、ずっと吠え続けたり、家の中のものを壊したり、糞尿を所かまわずしてしまったりするワンちゃんは、もしかしたら分離不安に陥っているのかもしれません。
今回は、「愛犬が分離不安かもしれない」とお悩みの飼い主さんのために、犬の分離不安について特集します。
犬の分離不安の具体的な症状やその原因を詳しく解説し、治し方や対処法なども探っていきます。
ぜひ、犬の分離不安を解消するヒントを見つけてください!
どんな症状?犬の分離不安とは?
分離不安が起こると、飼い主さんが留守中に
- 吠え続ける
- 家の中のものを壊す
- トイレでない場所で排泄する
- 自分の身体を舐め続ける
このような問題行動がみられるようになります。
さらに症状がヒドくなると、震えや嘔吐(おうと)、下痢といった身体症状にまで発展してしまうことも…。
このとき犬は、不安やストレスから犬自身が自分で自分をコントロールできなくなり、パニックに陥っている状態と言えます。
犬の分離不安は、飼い主さんにとって、かなり悩ましい問題です。
中には、犬の分離不安による諸症状に困り果てて、犬を手放してしまう人もいます。
ただ、犬の分離不安は、決して治らない病気ではありません。
犬との適切な関わり方やしつけなどにより、克服することが可能です。
分離不安になりやすい犬種
よく家を留守にしがちという方なら、「分離不安になりやすい犬種があるのなら、その犬種を避けて犬を選びたい」と思われるかもしれません。
しかし、残念ながら分離不安はどの犬種にも平等に起こり得るものであり、特に「この犬種だから分離不安になった」という例はありません。
もちろん、もともと犬が持っている特性も多少は影響しますが、分離不安を起こすのは特性だけでなく、飼い主とのかかわり方や環境によるものが大きいとされています。
ただ一つ参考になりそうなデータがあります。
ドッグカメラの「Furbo(ファーボ)」で有名なTomofun株式会社がFurboユーザー1200名を対象に、Furboに向かって吠えた回数(ワンワン通知)が多い犬種を調査しています。
出典:Furbo
その結果によると、ポメラニアンやヨークシャテリア、コーギーなどが留守番中によく吠える犬種として挙げられています。
ちなみに、この調査はアメリカでも同様に行われ、サモエドやヨークシャテリア、プードルがランクインしたそう。
吠えやすいからといって、必ずしもそれが分離不安であるとは断定できませんが、「吠えやすい犬種は避けたい」と考えているなら参考になるデータではあります。
犬の分離不安の原因
それでは、犬の分離不安の原因を詳しくみていきましょう。
環境の変化
まず一つ目に挙げられるのが、環境の変化です。
例えば、引っ越し等で住む家が変わった場合などは、飼い主さんと離れるのが急に不安になってしまうこともあります。
また、保護犬などで飼い主が次々に変わるという経験をした子や、飼い主との死別を経験した子も分離不安になることが多いです。
さらに、飼い主さんのライフスタイルが変化し、家にいる時間が急に短くなった場合や飼い主さんに赤ちゃんが生まれた時などに犬が分離不安に陥ることも。
飼い主の甘やかし
次に挙げられるのが、飼い主の甘やかしが原因で起こる分離不安です。
これは、飼い主さんが在宅している時、常に犬とべったりで犬の要求のままに行動している場合に起こります。
飼い主さんが留守になると、在宅時との差に耐えられなくなり、分離不安を起こしてしまうというわけです。
また、「留守にするとかわいそう…」と極力、家を空けない生活を続けている飼い主さんも要注意。
そういう犬は、一人で留守番するという経験が圧倒的に不足しています。
いざ一人で留守番するという場面になると、その状況に耐えられず、何らかの問題行動を起こしてしまうことに…。
飼い主の放任
上記の甘やかしとは逆に、飼い主さんが犬に対してあまりに手をかけていない場合も、犬は分離不安を起こすことがあります。
例えば、「散歩する時間がない」とほとんど散歩に連れ出してもらえない犬は、どうしても精神が安定せず、分離不安を起こすことが。
また、飼い主さんの仕事が忙しく、1日のうち家にいられるのは寝る時間ぐらい…という場合も、犬は「ほとんど遊んでもらえない」という状態が続くため、分離不安を起こしがちです。
過去のトラウマ
犬が強い分離不安を起こしている状態にある場合は、もしかしたら過去の留守番中に何らかのトラウマになるような事件を経験しているのかもしれません。
例えば、留守番中に雷がずっと鳴っていたことがあるとか、誰かに不法侵入された経験があるなど。
犬は、飼い主さんといる時よりも一人で留守番している時のほうが、恐怖に対する感度はぐっと上がっています。
そのため、過去の留守番中に何らかの嫌な思いや怖い思いをした経験がある場合、留守番自体がとても苦手な事になっている可能性があるというわけです。
老化
若い頃は、おりこうで留守番できていたのに、年をとった途端に分離不安になる犬もいます。
高齢になると、どんな犬でも目や鼻、耳などの気管の衰えが目立ちます。
例えば、目が見えない中、一人で留守番しているというのは、不安になることでしょう。
また、内蔵の病気にかかっている場合は、痛みや不快感があるため、飼い主さんに寄り添っていてほしいと思って当然ですね。
犬の分離不安の治し方や対処法
それではここからは、犬の分離不安の治し方や対処法を確認していきましょう。
犬を甘やかしすぎないよう配慮する
愛犬のことを溺愛していると感じている飼い主さんは、自分の愛犬に対する態度を見直してみましょう。
犬の要求に全て応えてしまっているという飼い主さんは、まず主導権は自分にあるということを犬に認めさせることから始めます。
まずは、飼い主さんのほうから「おすわり」「まて」「ふせ」などのコマンドを出して、犬がそれに応えたらそこではじめて犬を抱っこしたり、犬におやつをあげたりと犬が喜ぶことをしてあげましょう。
そうすればやがて、犬は「自分よりも飼い主さんのほうが上だ」ということを認めるようになり、落ち着きを取り戻します。
犬を充分に遊ばせる
逆に、犬と接する時間が短かった飼い主さんの場合は、犬と過ごす時間を極力作る努力をしましょう。
犬を飼うなら、散歩の時間を確保するのは当たり前ですし、また室内での遊びの時間も大切なコミュニケーションとなります。
どうしても家を留守にする時間が長くなりがちなら、留守にする直前に散歩に出かけるといいでしょう。
短い時間でも外に出ることで、犬はストレスを発散でき、分離不安の症状もやわらぎます。
外出時と帰宅時の行動に注意
犬の分離不安が強くなる一因として、飼い主さんの出かける前後の過剰な行動があげられます。
出かける前に「行ってくるね、いい子で待っててね」と声を掛けたり、帰宅後に大げさに可愛がったりすると、飼い主さんが留守にすることが強調され、分離不安症状が強くなります。
出かける前は、何も言わずにそっと自宅を出るのがおすすめです。
また、帰宅後もすぐにハグしたい気持ちも分かりますが、そこはぐっとこらえて、愛犬が寄ってきてもしばらくは知らんぷりしていましょう。
留守番の練習をする
例えば、飼い主さんがドアに手をかけただけでパニックになってしまうなど、分離不安の症状が強い場合は、留守番の練習をするのがおすすめです。
分離不安が強い犬の場合、飼い主さんがお化粧を始めるだけでも「留守番させられる」と思い、スイッチが入ってしまう子もいます。
そういう場合は、外出の支度をしていったん外に出てすぐに戻ってくるということを繰り返し、「外出の支度をしても、必ずしも留守番させられるわけではない」と学習させましょう。
飼い主さんが外出の支度を始めても、動揺することがなくなってきたら、実際に外出してみます。
ただし、最初は、ごく短時間から始めましょう。
少しずつ時間を伸ばしていき、最終的に長時間の外出でも平気という状態にもっていきます。
環境を整える
犬が、留守番中に過ごすスペースを快適に整えてあげることも大切です。
室温を快適に保つのはもちろんのこと、最低限、新鮮な水をいつでも飲めるようにしておきましょう。
また、外出時にはつい電気を消したり、テレビを消したりしがちですが、電気もテレビも点けっぱなしにしておくほうが、犬は安心するようです。
外出前に、犬が長時間遊びながら食べられるオヤツを与えておくのもいいでしょう。
排泄の失敗や食糞が見られるときは?
犬の分離不安の悩みで多いのが、トイレ以外の場所での排泄や食糞などです。
帰宅時に排泄の失敗に気づいたとしても、決して犬をしかりつけてはいけません。
何も言わず、速やかに片付けるだけでOKです。
犬は現行犯でないと、何について怒られているのか全く理解できません。
「何もしていないのに怒られている」と思ってしまいます。
こうなるともう飼い主のことが信用できなくなり、分離不安はますます強まるばかりに…。
疲れて帰ってきて、いきなり犬の排泄を片付けるのはつらいとは思いますが、分離不安がおさまるまでの我慢です。
犬の分離不安は病院での薬物療法もあり
犬の分離不安には、病院で薬物療法を行うという対処法もあります。
上記のような、飼い主さんの努力と並行して薬物療法を行うと、より効果があるとされています。
脳の神経伝達物質であるセロトニンを増やす薬を服用することが多いです。
セロトニンを増やすことで、不安感や恐怖心をやわらげることができます。
また、吐いたり下痢をしたりといった症状がみられる場合は、ステロイドなどが処方されることも。
いずれにしても、獣医師の診断が必要です。
分離不安があまりに強く、「飼い主さんの力だけではどうにもならない」と感じたら、動物病院へ相談してください。
犬の分離不安は根気強く治すことが大切
今回は、犬の分離不安の原因や症状、治し方や対処法まで詳しくみていきました。
本記事を読んで「犬の分離不安を解消するのは、一筋縄ではいかないな…」と感じた飼い主さんも多いと思います。
それは正解です。
犬の分離不安を治すには、とにかく根気が必要。
一度「怖い」「不安」と思ってしまった犬の気持ちをリセットするには、時間がかかると思ってください。
ただ、幸いなことに今は、犬の専門家が増えてきています。
「自分では無理」と思ったら、思い切って専門家に頼ってしまうのも一つの手段。
犬にとって、何が幸せなのかを一番に考えて最善の方法を模索していきましょう。