犬のしっぽから気持ちや感情が分かる!しっぽを振る理由とは?
犬はおしゃべりできませんが、しっぽの振り方で「気持ち」や「感情」を伝えてくると言われます。
犬がブンブンと激しくしっぽを振っている姿を見ると、可愛らしくて、ついなでたくなりますね。
でも、犬はしっぽを振っているからといって、必ずしも「機嫌がいいとは限らない」ということをご存知でしょうか?
実は、犬がしっぽを振る理由は、それほど単純なものではないのです。
そこで今回は、犬のしっぽの振り方によって読み解ける犬の「気持ち」や「感情」について特集します。
また、よく問題行動として挙げられる、犬がしっぽを追いかけたり、噛んだりする行動についても解説します。
これを読めば、犬がどういう気持ちでしっぽを振っているのか、理解できるようになりますよ。
犬のしっぽは3つの役割がある
それではまず、犬のしっぽの役割を確認していきましょう。
犬のしっぽには、大きく3つの役割があります。
体のバランスをとる働き
犬は、しっぽで体の重心を調整しています。
しっぽを上手くコントロールすることによって、歩いたり走ったりする時に、転ばないようバランスをとっているのです。
特に、全速力で走る時や、走りながらカーブを曲がる時などは、しっぽを使うことで速度を落とさずバランスを保つという絶妙な働きをしています。
体温の低下を防ぐ
短いしっぽのワンちゃんだと全く役に立ちませんが、長いしっぽを持つワンちゃんの場合は、しっぽが体温低下を防ぐ防寒具の役割も果たしています。
寒い時に、クルッと丸めたしっぽで体を包み込むように眠る姿を見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。
これは、無防備な鼻先に冷たい空気が触れないようしっぽで保護し、体温の低下を防いでいるというわけです。
コミュニケーションをとる
犬のしっぽの一番の役割といえば、コミュニケーションツールです。
犬はしゃべれませんが、しっぽで人間に合図を送ることによって、感情を伝えてきます。
また、犬同士のコミュニケーションツールとしてもしっぽは使われます。
ちなみに、しっぽが長い犬種のほうが短い犬種よりも、コミュニケーションは得意だそう。
犬のしっぽの振り方で分かる気持ちや感情
それでは、犬のしっぽの振り方で分かる気持ちや感情をみていきましょう。
しっぽを振る速さ
まず、しっぽを振る速さについて。
しっぽを振る速さが、速ければ速いほど、犬は興奮しています。
ここで注意していただきたいのが、しっぽを激しく振っているからといって、必ずしも犬が「嬉しい」という感情を持っているとは限らないということです。
確かに、激しくしっぽを振っている時は、「興奮」している状態ではありますが、興奮には「イライラして興奮している」という状態も含まれます。
そういう時に、犬をなでようと手を出すと、ガブリと噛まれてしまうことがあるので注意しましょう。
犬が嬉しくてしっぽを振っているのか、それともイライラしてしっぽを振っているのかを判断するには、前後の状況や犬のその他の表情を読み解く必要があります。
左右で違う!しっぽを振る方向
しっぽの振り方だけで感情を判断するのは難しいですが、一つ判断基準となるイタリアの研究があります。
それは「しっぽを振る方向が右側の場合は友好的で、しっぽを振る方向が左側の場合は不安や恐怖を感じていることが多い」というものです。
これはどうも、脳の構造と大きく関係しているよう。
ポジティブな感情を処理するのは左脳が関わっていて、反対にネガティブな感情を処理するのは右脳が関わっています。
さらに左脳は体の右側に作用し、右脳は体の左側に作用するため、それぞれの脳で処理された感情がそのまましっぽの振り方に出るというわけです。
愛犬が外で出会った人に対し、左側でしっぽを振っているようなら、友好の合図ではないかもしれません。
こういうときは「触ってもいいですか?」と聞かれても「かみ癖があるので、すみません」とお断りしたほうが無難でしょう。
しっぽの高さ
しっぽの高さも、犬の感情をあらわす目安になるとされています。
通常の位置よりもしっぽの高さが高いときは、嬉しく楽しいなどポジティブな感情を持っていることが多いとされます。
さらに相手に対して優位性を示したいときも、ぐっとしっぽを高くする傾向があります。
しかし、相手を警戒している時も、ぐっと通常の位置よりもしっぽを高くすることもあるので気を付けましょう。
逆に、しっぽの高さが通常の位置よりも低い時は、不安だったり心配していたりすることが多いでしょう。
しっぽを脚の間にはさんでしまう時などは、不安で心配でたまらず恐怖を感じている状態と考えてください。
また、しっぽを高くする時と同じく、相手を警戒している時も、しっぽをだらんと低く下げることもあります。
しっぽが水平
しっぽをピンと水平に張っている時は、軽い警戒の気持ちや、何かを発見した時などに、その何かに対して警戒する気持ちを持っていることが多いでしょう。
この段階では、その対象物がいったい何なのか分かっていない状態。
そのため、特に嫌な感情を持っていたり、逆に好ましい感情を持っていたり、ということはありません。
腰を落としてしっぽを振る
おすわりをした状態でしっぽを振っている時は、相手に対して愛情や尊敬といった気持があることが多いでしょう。
例えば、飼い主さんが帰宅した時や、また散歩中に仲良しの犬に出会った時に見られる仕草です。
「飼い主さんが帰ってきて嬉しい」という気持ちや「仲良しの犬に会えてハッピー」という気持ちをあらわしています。
吠えながらしっぽを振る
吠えながらしっぽを振る時は、いくつかの感情パターンに分類できます。
嬉しくて興奮している時なら、「ワンワン」と飛び跳ねながら激しくしっぽを振っていることが多いでしょう。
また、オヤツをおねだりしたり、「遊んで」とおねだりしたりする時は、ゆったりとしたしっぽの動きとともに吠えます。
さらに、警戒している時にも吠えながらしっぽを振ります。
こういう時は、低い姿勢でかつ、今にも飛び掛かりそうな形相で、しっぽを振りながら吠えていることが多いでしょう。
犬がしっぽを振らない理由
今までしっぽを振っていた犬が、突然しっぽを振らなくなる場合があります。
犬がしっぽを振らない理由についてみていきましょう。
しっぽの痛み
犬のしっぽには、骨があります。
しっぽをぶつけたり、何かに挟んだり、踏まれたりして、骨が折れてしまった場合、しっぽの痛みからしっぽを振らなくなることがあります。
また、筋肉もありますので、しっぽを振り過ぎて筋肉痛になっているという可能性も。
しっぽは、怪我をしやすい部位でもありますので、週に一度はしっぽに異常がないかチェックしましょう。
しっぽを触って痛がる様子があれば、怪我の可能性があります。
肛門周囲の異常
しっぽを振らなくなるのは、しっぽそのものの異常ではなく、しっぽに近い肛門部分の異常も考えられます。
肛門の辺りに存在する袋状の器官の肛門嚢(こうもんのう)に分泌物がたまって、炎症を起こしている場合が最も考えられる異常です。
しっぽを下げて肛門部分をかばうようにしているときは、肛門嚢をチェックしてみましょう。
犬のしっぽが下がったままなのは大丈夫?
水難救助を行う犬やラブラドールレトリバーなど大型の犬に多いとされるのが、リンバーテールです。
長時間泳いだ後などに、しっぽを下げたままでしっぽを振らない状態が続くことを、リンバーテールと呼びます。
まだ原因ははっきりしておらず、詳しいことは分かっていませんが、しっぽの筋肉のダメージによるのではないか、という推測が立っています。
症状は、数日から長くても数週間程度で落ち着きます。
犬がしっぽを追いかけるのはなぜ?
犬がしっぽを追いかけるのをよく見る!という飼い主さんも多いと思います。
犬がしっぽを追いかける理由について確認してみましょう。
単なる遊び
犬がしっぽを追いかけるのが「たまに」である場合は、単なる遊びと考えて良いでしょう。
遊び相手がいなくて退屈な時に、たまたま自分のしっぽが目に入って追いかけてみたという状態です。
しっぽが長い犬だと自分のしっぽが目につきやすいため、短い犬種よりも自分のしっぽで遊ぶ姿を見られることが多いでしょう。
また、子犬のほうが成犬よりも自分のしっぽに興味をもって遊びます。
ストレス
あまり飼い主さんに構ってもらえない場合や、運動不足の場合、またひどく叱られた後など、犬がストレスを感じている時に自分のしっぽを追い回すことがあります。
ストレスが原因の場合は、ストレスが解消されるまで何度も繰り返し、しっぽを追い回す姿が確認されます。
また、犬がしっぽを追い回す姿を飼い主さんが「可愛い!」と笑う、といったことが過去にあった場合、犬は「しっぽを追い回すと飼い主さんが喜んでくれる」と勘違いしていることも。
犬がしっぽを追い回す姿をみて、過剰に反応しないことが大切です。
しっぽに痛みやかゆみを感じている
しっぽや肛門周囲に痛みやかゆみを感じている時も、しっぽを追い回す行動が見られます。
あまりに頻回にしっぽを追い回すようなら、しっぽや肛門周囲に異常がないか、チェックしてみましょう。
また、しっぽを追い回すのは、「てんかん」の症状としても挙げられています。
何らかの異常が見られ、自宅で対処できない場合は、動物病院へ。
犬がしっぽを噛む理由
上記の「ストレスでしっぽを追い回す」状態が悪化すると、しっぽを噛む・しっぽを噛みちぎるという動作へと発展することがあります。
しっぽを噛みちぎる状態にまで悪化すると、しっぽを切り落とす断尾(だんび)が必要となり、外科的な施術が求められます。
これは「常同障害」と呼ばれる行動疾患の一つとされていて、治療が必要な段階となります。
治療は動物病院で行います。
犬の精神状態を詳しく分析し、薬物療法など様々な治療が試されます。
犬のしっぽを触ると嫌がられる理由
犬のしっぽを触ると嫌がられることが多いですね。
しっぽは犬にとって敏感な器官であり、感情表現のための重要な器官でもあります。
そのため、しっぽを不意に触られると、嫌がったり怒ったりするというわけです。
ただ、「いつでもNG」というわけではなく、タイミングを選べばしっぽを触ることは可能です。
それは、犬がゆったりとリラックスして横たわっている時や、眠っている時。
神経が過敏に働いていない状態なら、触らせてくれることが多いでしょう。
犬がリラックスしている時に、しっぽに異常がないか触ってチェックしてみてくださいね。
犬のしっぽの振り方から感情や気持ちを汲み取る
今回は、犬のしっぽの振り方に込められた犬の気持ちや感情について特集しました。
また、犬がしっぽを追いかけたり噛んだりする状態から、疾患やストレス状態を見極める方法も確認しました。
犬のしっぽの振り方から感情や気持ちを汲み取り、愛犬とのコミュニケーションをより楽しくおこなえたらいいですね。